「歯が痛みがないし、まだ大丈夫」——そう思っていませんか?東海市で製造業や工場勤務をされている方からも、「忙しくて歯科に行く時間がない」という声をよく聞きます。でも実は、歯周病(ししゅうびょう)は痛みがないまま静かに進んでいく病気。気づいたときには、歯を支える骨がかなり溶けてしまっているケースも少なくないのです。
この記事では、日本歯周病学会認定医の資格をもち、歯周病学の博士号を取得した院長・近藤駿が、「本当に歯が抜けてしまうのか?」という疑問に誠実にお答えします。進行のステージ・全身疾患との関係・今日からできる予防まで、一緒に確認していきましょう。
「痛みがないから大丈夫」は危険——歯周病が静かに進行する仕組み
歯周病とは?まず基本を押さえましょう
「歯周病(ししゅうびょう)」とは、歯と歯ぐきの境目にたまった細菌(プラーク=歯垢)が歯ぐきに炎症を起こし、さらには歯を支えている骨(歯槽骨=しそうこつ)を溶かしていく病気です。
歯と歯ぐき(歯肉)のすきま(歯周ポケット)から侵入した細菌が、歯肉に炎症を引き起こし、さらには歯を支える骨(歯槽骨)を溶かしてグラグラにさせてしまう病気が歯周病です。むし歯と異なり痛みが出ないことの方が多いのですが、気づかないうちに進行し歯肉からの出血などが起こった後、歯が自然に抜け落ちるほど重症になることがあります[1]。
「歯みがきのたびに血が出る」「朝起きたら口の中がネバつく」——こういったサインを見逃さないことが大切です。
なぜ痛みがないのに進行するのか
歯周病の恐ろしい点は、初期から中等度にかけてほとんど自覚症状がないことです。
歯周病は、とくに初期の段階では自覚症状がほとんど出ないので、歯科医療機関での検査を受けないと正確な診断を行うことはできません[2]。
痛みが生じるのは、多くの場合「重度」になってからです。それまでの間に、歯ぐきや骨のダメージはじわじわと積み重なっていきます。「痛みがないから大丈夫」という思い込みが、最も多く見られる受診遅れの原因のひとつです。
有病率から見る「他人事ではない」実態
歯周病は特別な人だけがかかる病気ではありません。
厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査」によると、4mm以上の歯周ポケット(ある程度進行した歯周病のサイン)を持つ人の割合は全体で47.9%で、高齢になるにつれ増加傾向を示しています[3]。2人に1人近くが、すでに進行した歯周病の状態にある、ということです。
歯周ポケット保有者の割合は年齢が増すにつれて高い傾向を示し、45歳以上では過半数を占めます[3]。働き盛りの40代・50代こそ、定期的なチェックが欠かせないのです。
当院・富貴ノ台こんどう歯科では、初診時に歯周ポケット検査(プロービング検査)を行い、まずご自身の口腔内の現状をしっかり把握していただくことを大切にしています。院長はデジタルレントゲンや歯科用CTを活用し、骨の状態を立体的に確認した上で、治療の方向性をご説明します。
歯周病の進行ステージ:軽度・中等度・重度でどう変わるのか
ステージ1:歯肉炎(しにくえん)——まだ骨は溶けていない
歯周病の初期症状は「歯肉炎」です。歯の表面に細菌の塊であるプラークが付着し、歯肉が炎症を起こして赤く腫れた状態です。炎症の範囲がまだ歯肉に限局されている段階を「歯肉炎」といい、この時点ではまだ、歯を支えている靱帯(歯周靱帯)や骨(歯槽骨)は壊れていません[4]。
つまり歯肉炎の段階なら、適切なブラッシングと歯科でのクリーニングで歯ぐきの状態を取り戻せる可能性が高いです。歯みがき時に「血が出るな」と感じたら、まずその段階で受診していただけると、最もスムーズに対応できます。
ステージ2:軽度〜中等度歯周炎——骨が溶け始める
歯肉炎の状態を放置すると、炎症が歯ぐきの奥へと広がり、歯周ポケットが深まります。
歯肉炎がさらに進行した状態では、歯ぐきの腫れや出血だけでなく、歯と歯ぐきの境目の部分が壊れて隙間が深くなり、歯周ポケット(真性ポケット)を形成します。プラークがさらにこの隙間に沿って侵入すると根の先の方へとさらに破壊が進行し、歯を支えている歯根膜線維や歯槽骨が壊されて、歯がぐらぐらと揺れるようになります[5]。
日本歯周病学会は、歯周炎の重症度・複雑度を4つのステージ(ステージ1が最も軽症、ステージ4が最も重症)に分類し、歯周炎の進行リスクを3つのグレード(グレードAが最も低いリスク、グレードCが最も高いリスク)に分ける新しい分類基準(2018年国際分類)を採用しています[6]。喫煙歴や糖尿病の有無も、進行リスクを左右する重要な要素です。
ステージ3:重度歯周炎——歯が大きく揺れ、抜歯リスクが高まる
重度になると、歯を支える骨の破壊が著しく進み、歯がグラグラと揺れます。食事のたびに違和感を感じる方もいらっしゃいます。
重度歯周炎においても、まず患者さん自身が歯に付着したプラークを除去できるようにトレーニングした後、歯周ポケットの中に付着しているプラークや歯石を除去するスケーリング・ルートプレーニングという処置を行い、深い歯周ポケットが残った場合には外科処置をおこないます。いずれの治療後も長期的に歯周組織を安定させ、歯周炎を再発させないため、適切なメインテナンスを行う必要があります[4]。
重度であっても、すぐに抜歯と決まるわけではありません。ただし「手遅れ」になる前に受診することが、歯を守れる可能性をより高めます。
当院では、マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を導入しており、肉眼では見えにくい歯周ポケット内の状態を精密に確認しながら、スケーリング・ルートプレーニングを実施しています。また、重度のケースでは歯科用CTで骨の状態を三次元的に把握した上で治療計画を立てます。
放置するとどうなる?歯を失うリスクと骨が溶けるメカニズム
歯を失う原因の第1位は歯周病
「歯周病で歯が抜ける」は、残念ながら現実です。
8020推進財団が行った「第2回永久歯の抜歯原因調査」によると、抜歯原因の第1位は歯周病で37.1%を示しています。第2位はう蝕で29.2%となっており、年齢階級別に見ると、働き盛りの40代からは歯周病の割合が年々増えています[7]。
歯を失うことは、噛む機能の低下だけでなく、見た目・発音・消化機能にまで影響します。また、歯科疾患は放置されると歯の喪失を引き起こし、咀嚼機能をはじめとする口腔機能の低下を招き、食べることの楽しみなどQOLに関連するばかりでなく全身の健康と生命予後にも影響することが最近の調査で明らかになってきました[8]。
骨が溶けるのは、細菌ではなく「自分の免疫反応」
「骨が溶ける」と聞くと、細菌が直接骨を削り取るイメージをもつ方も多いのですが、実はそうではありません。
歯周病菌が歯周ポケット内で増殖すると、身体はそれを排除しようと免疫細胞(白血球など)を集めます。この防御反応のプロセスで出る炎症性物質が、結果として歯槽骨を壊してしまうのです。骨が一度溶けると、自然に元通りになることはありません。
細菌が産生する毒素は歯周ポケットをさらに深めるとともに歯を支える骨を溶かし、進行すると歯がぐらぐらするようになり、さらに進むと歯が失われます[9]。
また、喫煙されている方はとくに注意が必要です。喫煙者では血管収縮による血行不良により炎症が抑えられるため、歯ぐきの出血や腫れが現れにくいという特徴があります[9]。つまり、症状が出にくいまま進行しやすいのです。
「進行した歯周病」が隣の歯にも影響する
歯周病が進行しすぎたために残すことが難しくなった歯を、無理にいつまでも残しておくと、隣の歯を支えている骨に悪影響が出たり、抜く時期を引き伸ばした後に骨の形が悪くなって、その後の治療に不利になります[4]。
当院では「できる限り歯を残す」という方針のもと、抜歯の判断が本当に必要かどうかを慎重に見極めた上で、患者さんとご相談しながら治療の方向を決めています。
歯周病が全身にも影響する——糖尿病・心疾患との深い関係
歯周病と糖尿病は「双方向の関係」
「口の病気が、体全体に関わるの?」——そう感じる方も多いかもしれません。でも、歯周病は口腔内だけに留まらない影響をもたらすことが研究によって明らかになっています。
歯周炎は思春期から発症し、成人ではほぼすべての人に何らかの兆候が認められ、近年、糖尿病や肺炎など全身疾患のリスク因子として注目されています[2]。
糖尿病と歯周病の関係は特に重要です。歯周ポケットから出て血流にのった炎症関連の化学物質は、体のなかで血糖値を下げるインスリンを効きにくくします[10]。その一方で、進行・重症化した歯周病が糖尿病の血糖管理に影響を与えること、したがって歯周病をきちんと治療すると糖尿病も改善するケースがあることが明らかになってきました[11]。
また、日本糖尿病学会では、「Ⅱ型糖尿病では歯周治療により血糖が改善する可能性があり推奨される」とし、糖尿病治療において強く推奨する(推奨グレードA)と提言しています[12]。
「糖尿病があるから歯が弱い」で終わらせず、歯科と医科を連携させた総合的なアプローチが重要です。
歯周病と心疾患・動脈硬化
歯周病のある場所にある歯周病原性細菌やその毒素、炎症のある場所で作られる化学物質が歯肉の毛細血管を通じて全身に搬送されると、心臓血管疾患、脳卒中(脳梗塞)、糖尿病の悪化、低体重児出産などを引き起こす危険性を高めることが分かってきました[5]。
J-STAGEに掲載された日本語論文でも、歯周炎患者は健康な人に比較して1.59倍、冠動脈疾患になりやすいという結果が示されたメタアナリシスがあるなど、歯周病と心疾患の相関を示す研究が積み重ねられています[13]。
「口の中の炎症が心臓に影響するなんて」と驚かれる方も多いのですが、全部の歯に深さ5mmの歯周ポケットがあると仮定すると、その総表面積は約72㎠にもおよび、これはちょうど手のひらと同じサイズになります。この傷から細菌が体の中に入り込む状態と言えば、イメージしやすいかもしれません[14]。
製造業・工場勤務の方は特に、体を酷使するお仕事ゆえに生活習慣病リスクも高まりやすい環境にいらっしゃいます。お口の健康が全身の健康とつながっていることを、ぜひ意識していただきたいです。
誤嚥性肺炎や妊婦への影響も
歯周病の全身への影響はそれだけではありません。
唾液に混じった歯周病菌が気道に入ることで起こる誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)は、特にご高齢の方に深刻なリスクをもたらします。また、妊娠中の歯周病は早産や低体重出産のリスクを高めることも報告されています[5]。
「口の健康」は「全身の健康」の入り口です。
今日から始める歯周病の予防とセルフケア——歯科衛生士より
まずは毎日のブラッシングを見直して
歯周病の予防はセルフケアが基本です。歯周病の治療で最も大事なのは、日々歯に付着してしまうプラーク(歯垢)を、日常のブラッシングで自分でしっかり除去することです[4]。
では、どう磨けばよいのか。毎日のブラッシングで意識してほしいポイントをご紹介します。
- 歯と歯ぐきの境目(歯頸部=しけいぶ)を、歯ブラシを45度に当てて優しく磨く
- 力任せにゴシゴシ磨かず、小さい動きで1本ずつ丁寧に
- 1日3回毎食後が推奨されていますが、回数だけでなく1日1回は歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシを用いた徹底的なブラッシングの習慣が身につくと心強いです[15]
特に夜(就寝前)のブラッシングを丁寧にすることが効果的です。就寝中は唾液の量が減り、細菌が増殖しやすい環境になるからです。「夜だけはフロスを」という習慣から始めてみてください。
歯間ブラシ・フロスを取り入れる
歯周病は歯と歯の間から進行することが多いのですが、歯と歯の間は歯ブラシだけでは磨ききれません。そのため、歯ブラシに加えて、デンタルフロスや歯間ブラシの使用が必要です[16]。
- デンタルフロス(糸ようじ):歯と歯の間の汚れを取り除く。歯ぐきが健康で歯の間が狭い方に向いています
- 歯間ブラシ:歯の間の隙間が少し広い方や、歯周病が進行している方に有効。ご自身の隙間の大きさに合ったサイズを選ぶのがポイントです
使い方が分からない、出血が心配という方は、ぜひ歯科医院でご相談ください。当院では、歯科衛生士が患者さんのお口の状態に合わせたブラッシング指導を丁寧に行っています。
定期検診でプロケアを欠かさずに
歯石の除去や、歯茎の下の溝に貯まってしまったプラークの除去のためには、歯科医院に来ていただく必要があります。歯科医師と歯科衛生士は、お口の中に蓄積した歯肉縁上と歯肉縁下のプラークと歯石を徹底的に取り除くことで健康な状態に戻すお手伝いをします[16]。
また、歯周治療を受けると歯周病原菌が減少して良好な歯ぐきの状態が得られますが、治療終了後に定期的な管理をしないと歯周病原菌が増加したり、歯周病が再発することがあります。定期的に歯科医院を受診してさまざまな項目のチェックやお口の清掃を受けることをメインテナンスといいます[2]。
目安は3〜6ヶ月に1回のメインテナンスです。ただし、歯周病の状態やリスクによって最適な間隔は変わりますので、担当の歯科衛生士と相談しながら決めていきましょう。
当院では、予防歯科・歯周病治療に特に注力しており、日本歯周病学会認定医の院長とともに歯科衛生士がペアを組んで、患者さん一人ひとりに合わせた予防プログラムを提供しています。土曜日も診療していますので、平日が忙しい方にも通いやすい環境を整えています。
まとめ
- 歯周病は「痛みがない」まま進行するのが最大の特徴です。歯ぐきの出血・腫れ・口臭などのサインを見逃さないようにしましょう。
- 抜歯原因の第1位は歯周病(37.1%)。放置することで、歯を支える骨が溶け、最終的に歯を失うリスクが現実のものになります[7]。
- 進行ステージは「歯肉炎→軽度→中等度→重度」と段階的に悪化します。早いステージで対処するほど、歯を守れる可能性が高まります。
- 歯周病は全身疾患とも深く関係しています。糖尿病・心臓病・誤嚥性肺炎などのリスク因子となるため、口腔ケアは全身の健康管理のひとつと捉えましょう。
- セルフケア(毎日のブラッシング+フロス)とプロケア(定期検診・クリーニング)の両輪が大切です。特に「夜だけはフロスを」の習慣を取り入れてみてください。
「歯茎から血が出る」「口臭が気になる」「歯がぐらついている気がする」など、少しでも気になる症状があれば、まずお気軽にご相談ください。東海市富貴ノ台こんどう歯科では、日本歯周病学会認定医の院長・近藤駿が、歯周ポケット検査から治療計画まで画像・模型を使って丁寧にご説明します。24時間WEB予約を受け付けており、平日は18時まで診療しておりますので、お仕事帰りにもお立ち寄りいただけます。バス停「星城大学東」から徒歩1分・広い駐車場も完備しています。お電話(052-613-8619)でのご予約も歓迎します。
はじめて受診される方は、初めての方へ(初診の流れ)もあわせてご覧ください。
参考文献
[1] e-ヘルスネット(厚生労働省)「地域歯周疾患指数(CPI)キーワード」kennet.mhlw.go.jp
[2] e-ヘルスネット(厚生労働省)「歯周炎 キーワード」kennet.mhlw.go.jp
[3] 厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」mhlw.go.jp
[4] 日本歯周病学会監修「ペリオブック」(perio.jp)「歯周病の治療で最も重要な歯周基本治療を詳しく解説します!」periobook.perio.jp
[5] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯周病」jda.or.jp
[6] 日本歯周病学会「歯周病の新分類への対応」perio.jp
[7] 8020推進財団「健康寿命の延伸はお口の健康から|8020読本 働き盛りのお口の健康」8020zaidan.or.jp
[8] e-ヘルスネット(厚生労働省)「訪問歯科診療」kennet.mhlw.go.jp
[9] e-ヘルスネット(厚生労働省)「喫煙と歯周病の関係」kennet.mhlw.go.jp
[10] 糖尿病情報センター「歯周病と糖尿病の深い関係」dmic.jihs.go.jp
[11] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯周病と糖尿病の関係」jda.or.jp
[12] 静岡県歯科医師会「糖尿病|からだの健康」s8020.or.jp
[13] J-STAGE(日本歯周病学会誌掲載)「歯周炎と動脈硬化性疾患の関連:最近の知見」jstage.jst.go.jp
[14] 日本アイ・ビー・エム健康保険組合「歯周病と心臓・脳血管疾患」ibmjapankenpo.jp
[15] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「ブラッシング」jda.or.jp
[16] 日本歯周病学会「歯周病の予防 Q&A」perio.jp